老いた石

地球の裏庭で髪を弄っている。草も花も気に掛からない。虫だって、星だって嫌なんだ。見えるようで、全ては匂いのようで、しかも何の匂いもしない。私は、一体何を見て生きているのだろう? 老いた白い髪、度の強い眼鏡、石ころだって電子の星からの、意味の…

リピート

私はあらゆるボタンを押してまわった。dボタンで全てが消去された。 リズムが揺さぶる葉っぱたち。頭の中の音楽に、全ての有線が断ち切られていく。 何もかもが静止した通りの中、揺らめく人影。この中で私の意識と心拍だけが駆動している。 理想は全てが記…

逃避

孤独を・記憶を睡眠毒で噛み潰す。私の身体が音楽/点になるのを待つ。LEDが向こう側で密柑色に暮れていく。画面の奥で電子の麦粒子が踊っている。RGBの奥の、奥で、奥へ、私の顔が流れていく。私は、私が私になるまで動かない。電話で、中の人に話しかけて…

王国

僕はここにいて、ここにしかいない。 暗い部屋の中。スピーカーから流れ出す、ニック・ドレイクの歌の中。 僕はここにいて、ここにしかいない。 *街外れの港には、油のにおいが染みていた。電柱の影は銀色で、送電線が光っていた。 夕暮れに、船はぎしぎし…

リチウムの中で

絵だって歳を取る。私は十万人の老人に囲まれて暮らしている。印象的な微笑みは、鏡の中に。 寂しさを、睡眠薬で噛んで飲み下す。リンドウの花が、蜂の巣の中で咲いている。 人は、人の孤独を「美しい」と言う。瞳孔の中で揺れているのは、いつも涙の海の光…

化石

君がおはようと言うから、僕はおはようと言い、君が喜ぶとき、僕は今日を過去に感じる。 頭だけが現実を映していて、足は僕から離れていく。 全ては僕の骨で、眠りから覚めるとき、僕は確かに孤独を感じる。僕に向けられた、君の目に温度を感じないから、僕…

モノクロ

山の果てから吹いてくる風の中には、パンの匂いが混じっていた。 詩と詩が触れあって白い川となり、天体装置たちは夜の中、やっと居場所を見付けた。 白い夜道をたどる人たちは、記憶の片道切符の行く先に、麦の匂いを嗅いだ。 葉が風に鳴る、その中を、赤い…

夢を見る前に

*破滅したデジタルの世界私たちは悲しい似顔絵のように夕暮れの方へと足を引きずっていく *私は私の部屋の外に拡がりを持たない拡がりを見渡す目は、私を窒息死させるから *目を瞑り、眠りに落ちる瞬間、私は永遠に触れる、空白の一瞬、私は宇宙の中心で…

冷えた空の下で滅びるばかりの感情にしがみついた 僕らは何処で繋がれるのだろう?挨拶の中で?それとも大昔の思い出によって? 僕は正しいのか、間違ってるのか、そんなこと、空の方へ全て忘れてしまいたい、 静けさに、青く、青く、包まれて、 綺麗事を大…

意味

私は火葬された静寂へと、ひとり帰って行く、涙は空へと蒸発していく 真夜中が好き涙が最も透明に光る時間知ることは、思い出すことなのだとひとりきりで笑える、そんな場所 あなたは簡単に涙を流す、私は、あなたの肩を抱きながら、生白く光る自己嫌悪に吐…

FLAC

あなたは・・・、何を?何を求めている? せつなさ? それとも排他的な呼吸? 夜は、あなたを呼び起こしていく、意識は(ブラックアウト)して、いく・・・ 時たま現れる奇形は、親密なよそよそしさを浮かべ、ながらも、ぼやけていき、すべては一律に私であり、ガ…

理由

1私は呼吸を無駄にするだけ薬を噛んで魚になる透明な時計台が見えて その回りを死んだ子供たちが 永遠に飛び巡るのを見ていた 光の輪につつまれて私は虹の一部だった 手負いの動物の化石みたいに長いこと 涙の流し方を忘れたまま 葉っぱで出来た店がタオル…

夕暮れ

そして僕たちは、固い葉脈に到達した赤い命が、ゆっくり燃えているゆうべ見た夢が、静かな冬となって許された世界の仮想となる 奈落。会話の中に冬があり世界は暗い森の中で夜ごとに花を咲かせる 音のない世界、光のない夢長い、夢の中であの、赤い日々たち…

眠りの歌

ここあって、そこに無いもの、例えば指先の痛み、山の桜の林の遠景、夢、サルビアの蜜、庭土に刺さったガラス、北欧の青旗、 眠りは青く甘い死の味がする。その甘さは、ちょっと感動的だ。朝陽の中を鳴る、森並みの風のように、その中を歩く死んだ子供たちの…

届かない光

1会いたい気持ちを代弁してくれるのは、ビデオテープ、寒暖の差、秋に吹く冷たい隙間風、虫の声、ずっと大切にしてきたいくつかのもの、 私は私であって、私の身体じゃない、 ひとつひとつの物たちが、ものたちの影が、服が、服の皺が、愛おしい。 2届かな…

煙に照明が当たりそれが紫に昇っていく白い人影が石垣の傍から溢れては消えていく カーテンなんて無くてよかった 灰色の山で木々たちの死んだ頃僕はカラスについての詩を書いていて庭では枯れた花が揺れていたその山はもう無いけれど 今僕は部屋にいる庭石に…

あなたたちの拘りの無さがどんなに私の皮膚を抉るか、きっとあなたたちには想像も出来ない あなたがあなた自身を嫌いなことでどんなに私の骨格が軋むか、あなたには見えない 私の中の花にも私の中の本にもあなたはただ名前を付けて外から眺めているだけ 私は…

弧続

本とノートと人生と孤独 宇宙の果てには海があり海の底にはやっぱり花が 孤独な星座たちギターアンプの光だけが孤独を雲に反映する 僕は衛星に乗り架空の大地を旅している 存在することが出来ないものたちに祈りながら くすくす笑いが聞こえるプラスチックで…

真夜中の歌

一曲だけ歌ってこの人生を終わらせたい それだけで完璧だ 誰かの記憶鳥たち花の色土の上の影そんなものでこの地球は出来ていて 今、私には私の指が見えるいつか誰かに触れる指? この指は奏でるためにある この指は黄色いパルスを発生させるためにある この…

古びた本たちだけが僕を知っている。僕と一緒に古びてきた、本とノートのある場所、そこだけが僕の故郷。寂しい遺伝子。 物質なんて信じないけれど、寂しさだけは信じている。 真っ暗な空を、黒い蝶が飛んでいる。誰にも見られることなく。現実って、多分そ…

きれいなものたちへ

今年もまた、私はこの椅子に坐って、紙縒りのように詩を書いている。緑色の、温度の無い砂漠の中を、両腕で飛ぶようにして。優しい私。 ちっぽけな私。 私は私に纏わるもので出来ていて、私は私に冷たい。 あなたは料理をする夢を見る。食卓には色がある。目…