小説

空を買いに

その店には誰もいなかった。天井は無く、空だけが拡がっていて、それは染みひとつ無い、上質な青空だった。空には値札が貼られていたけれど、少しばかり高価だったので、1m四方くらいなら買えなくもないけれど、僕の部屋の天井全体に設置するには、手持ち…

海の花

「記憶自身が自殺するような朝にね、百年後には誰も私たちのことを知るひとなんてひとりもいないと思ったら、あたしは今日いちにちがちょっとした冒険みたいに思える。ほら」と言って真海は床の青いカーペットに指を這わせて、「もう音楽が始まっている」 そ…