散文

メモ(寂しさの欠片)

寒さの匂いがする。白っぽいスピーカーから、酸っぱいくらいの、エレキギターの心地良い高音が流れ出してくる。どこまでも作りものの世界で、私が生きている理由は、ただ音楽が血に溶けて、心臓を疼かせてくれるから。 寂しさの欠片はどこででも見付かる。た…

メモ2(草稿2)

* 僕は23年間、精神の病気だったので、23年前の、いいところだけは取り戻そうと思う。同時に僕は沢山のことを知ったし、役に立つことは、いい歳をした大人として、何でも活用しようと思っている。 僕は昔、市役所職員か、たこ焼き屋か、小説家になりたかっ…

メモ2(草稿1)

* 大人になると、ちょっと変わった価値観を持てるようになるから面白い。自分で自分の目標を設定して、自分を変えていく能力を持てるようになる。 僕は子供ではなくなったけれど、未だに大きな遊園地の中は、楽しくても同時に怖くて、片手には風船を握りし…

永遠として

私が生きていることと、私が死んでいること、の間に、違いがあるとするなら、誰に、 何にとって、どんな違いがあると言うのだろう? ――私が生きているとき、あなた達は死んでいて、私を殺そうとする、 ――私が死んでいるとき、私の望みは常に叶い、あなた達は…

奏でる

冷戦時に於いて、地球は火星よりも、太陽に近かった。今でもそう信じているひとはいるし、そしてまた子供の教科書を書架いっぱいに集めたあなたは、八歳の誕生日に、茶色の小瓶を買ってもらって、中で蝶を飼うことに決めたけれど、大人になった今でも、あな…

詩のこと、言葉のこと (3)

日本語の美しさって、呆れかえるばかりだ。意識の表面に並んでいく、ささくれ立った言葉をあっさり捨ててしまって、心の深くから浮かび上がってくる言葉たちだけを信じること。夜の部屋、泡のようなLEDの光の中で、瞳孔が拡がっていく。拡がった瞳孔の奥に、…

詩のこと、言葉のこと (1) (2)

僕が中原中也を好きなのは何故か、言葉には出来ないけれど、敢えて言えば、中也の詩には現実感と非現実感の間での揺れがあって、非現実感から現実感を取り戻そうとする希求を感じて、それはもちろん僕が勝手に感じていることだけれど、とても僕の感覚とシン…

日々のこと、考えたこと

11月5日(土)、 朝。不安だ。陽射しがぽかぽかして、子供らの声がする中で、僕は骨まで冷え切ったような気分でいる。身体じゃなくて、心がかじかんでいる。昼の光の中で分裂して、我を失いたいと思う。部屋の中は、中途半端に古びた、つまらなくて心に反す…

羽化することのない痛み

この頃は、多分軽躁状態だ。毎日が楽しい。けれど一抹の不安。 今僕はふわふわ浮いていて、ほとんど喋り尽きるということがない。身近にいる母が僕のお喋りの一番の犠牲者になっている。僕は何時間でも喋る。意味は無くて、途切れない音と、滑らかで棘の多い…