レッド

ひと呼吸ごとに私の欲望が
沈み込んでいく
痛みが欲しい
痛みの波打ち際が恋しい

怖かった
身体を離れるのが
身体という故郷を
失うのが

もっと もっとだ
もっと痛くなれ
身体という輪郭を割れ

身体の外で迷子になれ
麻酔をかけられた宇宙の中で
甘く
空気を吸いながら

力を抜いて
死んだ植物みたいに
緑色した
風を浴びて

歩道で寝転びたい
身体とは記憶
記憶とは
強いられたもの?

生きる姿勢なんて関係なく死に続けてる

指先の皮膚や繊維が
剥がれて溶けて
みんな骨になればいい

骨になれ みんな
やわらかい 空気に溶けて
みんな
空間になってしまえ

痛みの後で手に入れた
愛くるしい、五本の指
空間を掴め

刻め
刻め
刻め

宇宙をベッドに引き入れて
眠りに就こう――
ひと呼吸ごとに消失していく欲望を数えて……

もっとだ
もっと痛くなれ