空間を愛せるまで

あ、ちょっと森のような。
配水管の白さに陽が当たってて。
理想なんて価値が無くて、
死んだら私、衛星になって、
永遠に、街を見下ろしてていいですか?

赤いフレームの眼鏡を掛けて、
冷たい海を、青く傷付いて、
生命線の泉を、ガラスの裸で、
ひとり愛してていいですか?

春の世界を見下ろしながら、
血の雨が降るまで、
ギターを弾いてていいですか?

夜が全て、夢見のいい眠りに染まるまで。
夜の住民たちが、甘い大気を、
たっぷりと食べられて、彼らの満ち足りた身体が、
音楽へと、溶けていけるまで。

空を見下ろし、血を吐くまで歌って、
指先から血が流れるまで、
ギターを弾いていたいです。

それが、私の願い。
眼に映る活字の世界。
そうっと、ディスプレイに手を伸ばす。
腕と空気の境目も無く、空間には座標が無く。

プログラミングされた世界でも愛おしい。
街を見下ろし、私は私の消滅と、
血の濡れた温度を感じたいです。

生きてる間、私は個体で、
がむしゃらに絶望のパズルを迷うのでしょう。

死んだ私は、また眼となり、映る世界をただ聴いて、
人たちの不幸と生活の中にある、
無限の愛しい命の種を震わせながら、
祈りそのもののとなるのでしょう。

ノイズ、全てはノイズです。
ぱっちりと目覚めた夢の中で、
過去も未来も永遠も、生も死も無く、
私は今、私を許してていいですか?

消えていく、消えていく。
全ては、元あったように。
私もまた永遠に、
身を沈めてていいですか?

全てが元あったように。
死後の永遠に、
身体を溶かし尽くしてていいですか?



森の冷たい手前で、とてもとても若かったこと。
私は身勝手な私の底に、ひとり沈み込んでいく。
ガラスの地球儀に、×印を付けていくみたいに。

ガス室みたいなベッドで、
ひとり、ビル風を浴びています。
アスファルトの透明さを危ぶみながら。

ちょうど手のひらに乗るサイズで、
歌は溢れています。


私は、危うさを、
とても愛しているのです。
好きな人に好かれないから、
この世は地獄ですが……。
結局は、
地球とは幽霊であり、そして沈黙なのです。


寂しくて、自分のことが分からない女の子の秋、
冷たい森のようなこの気持ち、
あたりまえ、で溶けてしまう、壁の前、
風にカーテンが膨らんでいる雨の路、

心の帰り道と、安心できる家。
私が私を受け入れられる家。

誰にも変だと思われない、
誰もに必要とされる、酸素になれるような、

……ひとりぼっちで私を愛せる、
部屋をください。