安定剤の中で

絵だって歳を取る。
私は十万人の老人に囲まれて暮らしている。
印象的な微笑みは、
鏡の中に。

寂しさを、睡眠薬で噛んで飲み下す。
リンドウの花が、
蜂の巣の中で咲いている。

人は、
人の孤独を「美しい」と言う。
瞳孔の中で揺れているのは、
いつも涙の海の光。

パワーショベルやスマートフォンが、
ゴッホの絵みたいに、
みんな黄色く塗られて、
ふと周りを見渡すと、
皆が私であるような錯覚に陥る。

脳が孤独の色に染まっていく。

私は赤信号を見上げる。
信号の赤はたらたらと、道路に溢れ落ち続けている。

私はひとりの季節を、ひとり、風になって消えていく。