スケープ

まだ青い枇杷が、骨の山から、夕涼みの温度まで、甘い速さを下っていく、
「綺麗にしてよ」、
と太陽が言う、ペン先で人を描く、指先まで死んだ温度、
車も、野原も腐っていく、青い、藪や、一面の野薔薇、

死んだ音がする、水面下で生まれたガラスの汽車が葉っぱたちに囲まれ、
山際を守る家たちは、秋の鳥たちの声を吸って四角い、
その階段の陰には、光が斜めに差していて、
窓枠には蜘蛛の巣が貼られ、高価な仮面のよう、それから旅人みたいなリス、

一世紀分の春、十世紀分の夜、雨の世界と森の地図、あわい網目の葉っぱが、川面に落ちて、解けていく、
水の音ばかりがして、そこら中に開いた自然の排水溝の上には、水のドームが建っている、
その点、私たちの夜は、グリーンのグリッドで、時間表示は7:30、
ピンクの夕暮れは近い、ペンキ塗りの目蓋、もみ殻、飴、あめ、あめ…美しいローディング時間、

視界はもう、滲んだ魚、影の鉄塔が重なり、重なり、汗が流れて、
私は小さな円形のプールにぐじゅぐじゅと落ちていく、

手を伸ばしたところで前足が触れた、アイテムとしての空間、空間表、
弾かれたような雲、重なった影が伸びて、伸びて、
イタリア車は涸れて、伸びて、ショッピングセンターの看板は、その、真新しさだけを、空に尖らせ、

半ば適当なところで、精神のレールは途切れ、骸骨みたいな観覧車がぐるぐる回り、
年の差なんて気にしないという余分な体液、が
タイルのような蓮の葉の上を、回った、

風景の中心で、まだ産まれたての人間の心臓が、スピーカーのように震えて、
青いカギ括弧に閉じられていく、

杉の木たちは、いつものまま、昨日のままで、
泣き虫たちの時代は、終わっていく、
錠を開ける、人たちの列……


雨が地殻変動のアナウンスを歪ませていく、
山の向こう側から、この部屋、頭の中を叩く人たちの列は、あまりに遠く、透明で、
ペン先からは、ヨードの匂いがする、
夜には心も黒いので、私は目を瞑る、
目を瞑る……