小さなメモ

 僕の中にはドアベルがあって、その向こうには小部屋がある。小部屋に僕はいるかもしれないし、いないかもしれない。小部屋からは、どこまでも降りていける階段がある。オレンジ色の光に包まれた鍾乳洞があり、光の降る小さな滝があり、古い本が堆肥になって花が咲く畑があり、冷たい地下水があり、海がある。海には潜れるかもしれないのだけど、実のところその海の底こそ、僕が常にいる場所なのかもしれない。想像することで、僕はあらゆる場所に行ける。本を読むのもいい。
 僕の心にはもともと小部屋があったのかもしれない。ドアベルを付けてくれたのは誰だったのだろう。
 僕の中には真っ白な世界がある。