メモ(音楽と心臓、日常)

 他人に向けて、自分を演じるのはやめた。

 音楽をヘッドホンで聴いている。聴いているのは脳ではなくて心臓だ。

 リズムやメロディや音色を、指先でなぞっていく。誰にも見せない恥じらいのようなものに、そっと寄り添う。毎日箱を開けては埃を払う。その箱を、僕は死後まで持って行くだろう。
 箱の中には虹が掛かっている。カラフルでモノクロな流れ。感情や、生活の中の喜怒哀楽。微かに遠い場所から、僕の心や身体へと降り注ぐ音の粒たち。細胞の中の海が震える。大好きな音楽たち。
 僕の身体も、意識も、感情も、みんな音楽で出来ている。音楽との親和性。消えてしまうことが僕の最終的な願い。終止符の無い永遠の音楽。あらゆる音楽は永遠の断片。好きな音楽もあれば、嫌いだったり、分からない音楽もある。
 僕の心身は見えない光で発光している。音楽はあり続ける。僕もまた音楽の一部。

 音楽の中には詩がある。死角の方へと音楽は拡がっていく。

 何も無くていい。音楽と、キーボードを打つ感触。それさえあれば。

 この世で一番面白いのは、詩と音楽だと思う。それから小説も。いつも目覚めていたい。そして、自分自身を離脱していたい。詩に永遠を感じること。それは、本当に素晴らしい体験だ。

 僕は、個人的には瞑想も運動もしない。幸せもいいけれど、不幸も不機嫌も憂鬱も、心の引き出しに、そっと仕舞っておきたい。ときどき取り出して、思い切り落ち込んだりしたい。

 オレンジの住み家。漢字のスペース。……