故郷と、それから


望遠鏡の冷たさ、濡れた道
工場の光は銀河のよう
心臓は空虚を通して鳴る
自意識が膨らむと
みんな影になるんだね
その影が、好き
影の中に歌があり、
宇宙があるのだから


枯れ枝のような道。
街にも、日本にも、地球にも、宇宙にも
僕の居場所は無い。
見える世界全てが、
僕とかみ合わない。


中庭。赤い樹が葉っぱを厚く落としている。私は宇宙の端にいる。
誰も私の苦しみを知らない。退屈な通院者たち。私は最後の歌を得ている。
世界には満遍なく優しさが満ちていて、
恐怖なんて何処にもない。
皆は諦めるなとか、諦めろとか、適当なことを言うけれど、
私はただ生存し続けるだけ。澄んだ空と、海の底で。
誰ももう、私を気にしない。


風が生ぬるく吹いている。夜見の川みたい。
心臓がそこかしこに転がっている。
景色の中で。石ころみたいに。

優しさと音楽に違いはない。
流れてくる涙が、僕と折り合わない。

(規律から逸れることしか出来ない細胞)

無感動。夜の帰り路。
小さな植物園に住みたい。
ブランケットを着て、草の雫を主食にして。


どんな恥だって進んで受けたい。
私の一対の眼に、全てが映るまで。
私に映る全てが、雨になるまで。


それから。

私を踏み台にして今日を生きて。宇宙は不幸でも孤独でもないけど、あなたはそう。今日を生きる光を産み出すために、私を踏みつけにすればいい。今日の光を、未来へ投げかけるために。どうしてそんな困った顔をしているの? 温かい記憶を探して? 甘い光を浴びて、私はひるまず死んでいく。どんな歌でも私を殺す。デジタルの中で、私たちは光の甘味料を浴びて永遠を生きる。
私の指先を思い出して。

理性では抑えきれない自分を愛して。