メモ

僕の世界には、光が足りない。暗い酸素が血流を濁していく。僕の中には些細な苛立ちと、朽ち果てた生木みたいな腐った生気がある。月も暗ければ誰も見てくれない。
生きることは、果たして生きるに値することなのか。面白いことなんて殆ど無かった。生きていればいいことがあると言う人は、そんなの嘘だからそう言うのだと思う。本当にいいことがあった人は、いいことなんて、人生にはほぼ無いと知っていると思う。
僕は、自分を知りたい。人を知りたい。
人を笑うのも、憎むのも、自分が人であるからだ。他人と同列に自分を置けること。それが出来るだけで、その人は十分幸せな立場にいると言えるのではないだろうか。


あの世の言葉を残すこと。身体が死ぬ前に、死を体験すること。


どう生きたっていつかは死ぬ。そう遠くない内に。命に執着しても寿命は変わらない。隕石が落ちるみたいに、死は訪れる。

今すぐ死ぬのが一番いいんじゃないかと思う。何を書いたって、何も書かなくたって同じ。できれば書いて死にたいけど。……
何をしたい? 死ぬまでに。……何もしたくないときが多い。何かをしたいときは、何をしようかなんて考えもしない。


鬱は、気持ちの持ちようじゃどうにもならない。上手に考えられる人が上手に生きられる訳じゃない。何故だか落ち込まない人っていうのはいるのだと思う。多くの人が、もともと生きるのに適していないと思う。


ぼんやりとひとつかふたつのことを考えているだけで十分だ。緊張しすぎて逆にハイになれる都市の中も好きだけど。朝から、小鳥に餌をやって、小鳥を眺めてコーラを飲んで、インスタントのラーメンを食べるくらいで生きていて、丁度いいんだと思う。他のことはみんな多すぎる。

嗅覚が鈍感になっていく。寒さを感じなくなる。冷気の中で裸足でいても、足の存在を忘れている。僕はもうひとつのネットワークに繋がっている。

窓を開けると、季節外れの、金木犀みたいな匂いがする。明日死ぬつもりで生きていくことには変わりはない。いつか死ぬときがきっと来る。今日死ぬかもしれないのだから。

紙に書く日記は、雨が降ると哀しくなる。パソコンのディスプレイはドライだ。ディスプレイがガラスで出来ていたらいいのに。ディスプレイに触れると、液晶が滲む。古いガラスの瓶に入ったお酒を思う。薔薇の匂いのする渋いお酒。パソコンも、打ち込んだ文字によって熟成されてくれればいいのに。