メモ

ぼんやりとしている。途中までしか見ていなかった『東京暮色』を最後まで見た。見るのは二回目だけれど、救いようが無くて、暗い映画なので好きだ。

身体の感覚が遠い。自分の心と身体に、意識がきちんと接続されていない。このまま意識だけが全てから切り離されて、意識以外は全て消えてしまったなら、とても気持ちいいだろうと思う。それなのに中途半端に、社会から孤立することや、誰にも顧みられないことの、漠然とした不安に取り憑かれている。自分が狂うのではないかという恐怖がある。

怠い。何を書いているのだろう? 何の為に書いているのだろう? 脳の中で、脳幹の辺りで、視界と音楽ばかりが僕にとっての現実で、時々は何もかもがカラフルだ。でもそれだけでは駄目なんだ。光に満ちていたい。言葉は文字通りの魔法で、本当にきちんと言葉を使えたなら、全ては光で照らされる。自分の言葉が歪んでしまうことが怖い。思考が強迫観念的になってしまう、もしくはもうなっているのではないかと思うと、とても怖い。

暗い未来予測を止めることが出来ない。空っぽなのに、何かが起こりそうな恐怖にだけは満ちた過去・現在・未来。動く理由も、生きる喜びも、真っ黒な網目にぐるぐる巻きにされていて。辛うじて思い出の涼しさだけが、僕の心拍を宥めてくれる。過呼吸。理由の無い疑い。

……音楽の密室性が、僕をこの地上に繋ぎ止めてくれる。それもいつまで保つだろう? 今が永遠ならいいのに。今この瞬間を、痛いくらい感じられたらいいのに。

細胞の呻きを、指だけに集中させる。憂鬱と光を織り混ぜながら、自己愛で満たされた密室の中で、自意識とお別れしながら。けれどテーマは混迷した自分のことだけ。ずっとずっと遠い自分の、愛された死体、解剖されてミキシングされた内臓。神さまを期待しながら。

ここは、何も無い部屋。

書き割りみたいな日常。腕を切ると、すーっと頭が冷たくなる。その感じは、ちょっと癖になる。でもその感じを得られるのは、瀉血したいくらい何かが溜まっているときだけ。僕の脳は毒物を製造している。

この命をさっさと片付けたい。

スパークリング。SOS。手の中の奥深く。手の向こうの先の先。
人類が滅びるまでの前夜。

ただ、あちら側に行くだけ。