メモ(不眠)

 ベッドに横になって、眠れずにじっとしていると、すぐ不安に浸されてしまう。胸の辺りに軽い気体が充満してくるような感覚があって、知らず知らず、身体を丸くして、手をぎゅっと握りしめていて、脛の辺りにも力が入っている。不安が不安を呼ぶ。さっき友人に送ったばかりのメールがひどい内容だった気がしたり、宛先を間違えてないか気になったり、両親の不仲の原因が自分にあるような気がしたり、自分には何の才能も能力も無く、ごろごろしているしか能が無いと考えたり、今にも地震が起きて、明日から避難生活をしなければならないかもしれないし、その場合、病院の薬はどうなるんだろうと思ったり、何とはなしにひとりぼっちで、誰からも忘れられたか、嫌われたような気がしたりする。
 お腹のずっと奥の方に真っ暗な空間があって、そこで大きな歯車が回り続けていることをイメージする。手挽きの石臼くらいの速度で、静かに穏やかに回っている。人の気配が消えていくのを待つ。励ましてくれる誰かよりも、一緒に堕ちてくれる誰かを待っているような気がする。自分自身が、いっぱいの友達に囲まれてて幸せ、というイメージが湧かない。世界はとても美しいけれど、寂しくなければ、綺麗なものも可愛いものも、みんな忘れてしまうような気がする。