リチウム

時の中、耳の腫れの中、数えて、今を。
空気が見える。黒ずみの中に。
十年前、十五年前……今は、段々新しくなる、
ピアノを弾くように。死にものぐるいで
生活していたんだ。

生活に手を差し伸ばすことが、
たまに「愛」という名を掠める。
おもちゃ遊びの子供のようには、
誰も器用に眠れないけれど。

生活から手ぶらで帰りたい。
何も日差しを遮るものは無く、
太陽は酸で、
野中にはポッキーが生えていて、
私は「こんにちは」と挨拶をして。

私は生活の中で生涯を終えたい。
エイリアンから何も読み取られないように。
抗不安薬に比べて
私の容積は大き過ぎるのではないかと
怯えながら。