季節の海(2)

……もういいよ、と誰かが言ってくれるまで、
僕は引き裂くように、ギターを弾くだろう。

練炭と七輪が既に捨てられていて、
僕はひどくうろたえてしまった。

610ハップとサンポールを買ったときもそうだった。
母はそれを善意だと思っているのだ。

僕はそんな善意も気にしないで、本当に気にしないので、
わざとみたいに目に見える場所に置いていたのだけど、
捨てられてみると、無性に死にたかった、ような気がした。

数えてみる。
僕のしたいこと。
それは結局、僕が感じる、というところからしか始まらない。

夜の水際で蛍光虫が息を詰めている。

しずかに、しずかに夜はくだち、
活字は喉に滲みてくる、
銀色の干物のよう、
心にすんと、滲みいる感じ。

揺らぎ、揺らゆる煙草のにおい、
ああ、僕の眼の中には、

分厚いニッケルのような、
木材が並んでいる。

木材は、それ自体が光るように、光っているだろう。

誰ももういいと言ってくれないから、
夜は活字のように甘いから、

僕はギターを抱いて、ギターに抱かれて眠ろう。

音色が僕の底に浸み、そこに満ちて、
夢の中で、全てがゼロになるまで。

いつか、パンの匂いのする、
朝が訪れるまで……