ガラスの中

ハチミツが、曇るような夕方。
ねえ、三度の図書館通いも、擦り足で
ガラスの縁が溶けていくような、
文字盤の上の日常だった。

タンポポが、闇に乾いて咲いていた。
世界の総量は、
黒い、人工皮革の辞書に閉じられた。

涙と、雨の区別が付かない。
四角い、ひび割れた建て物たちが、
神経網みたいな枯れ枝といっしょに、
逆さまになって、ゆっくりと
ゆっくりと沈んでいく。


あなたの幸福はあなたの涙。
出会わなければ知らない、風景は、意識は、そしてあなたの中の薬は、
あまりに夢で、あまりにクリアで、そしてそれは静かな
前世の日記帳に似ている――カルキ化した鉛筆の跡、夢……
……越しの円形の宇宙、
部屋、街、……街・街・街、
 全ては歪んで歪んで、
流れを形作っている、ガラス張りの街。人、
、花、……

送電塔、行方、フィルム、泣きたくなれば
質量を忘れて、であう
出会ったばかりの、あなたの手に、
 そう出来るって、確約されてる、
 政治的意図は秒針、空気、…苦しいよね
涙と痛みは、最後の平穏……許しの音、
人の声の音域の、音。


死にたい。死にたいほど悲しい、夢の中で、
滑り台の夢、あなたと私は
同じ、子供、区別が付かない、崩れ落ちて、
崩れ落ちて、冷静になれば、
感情だけが揺れている。

暗闇が私を縁から浸し始める。
固いほどの現実は、いつかの日の夢の為の、
約束手形
眼前の現実を、引いて引いて、
弾いて、見るための、余暇……


優しい、嘘を吐いてください。