消えていく

部屋の片付けをしている、
私は自分自身の部屋が嫌いだ、

本は呼吸している、まるで排他的に、
言葉なんか乗り物に過ぎないのに、

私はいっそ修道僧になりたい、
でもそれは世界がつまらないと認めることかな?
世界中をトランス状態に出来ないかな?
インターネットも科学も哲学も文学もみんな総動員して、
人類なんかひとり残らず救われればいい、
皆が、個人的に、

それは私にはとても無理なこと、
私自身が、まず完全に救われなきゃならないし、
そのために自分を傷付けもする、
と、そのために他人を傷付けもする、
分かってはいるんだ、私は要するに肯定したいし
肯定されたいんだって、
そのためにどうすればいいのでしょう?、
私は何なのでしょう?、

死と生の中間で、生物と物質の中間で、
頭の中をモノクロにしてしまいたい、
データだけの存在になりたい、
身体を失ったら魂は消える、とは思わない、
私は身体から解放された自分の意識を
想像出来る、意識は既に手のひらを離れた場所にある、
私はただの意識になって、世界にばら撒かれたい、

私が消失しても、確かな存在はどこかで保証されている、
儚いけれど確かな実在、あるいは不死の予感、
私の肉体は滅びるだろうけど、世界は言語的に、
永遠を証明出来るでしょう、

みんな自殺したくなるでしょう、
地球は静かな静かな星になるでしょう、
不安になる理由なんて何も無いのに、
何なんだこの不安は、
けれどどこかで命を讃えたくて、
「生まれたばかりの君におはよう」
「生まれたばかりの世界におはよう」
「浅い浅い夢を見るだけ。海の底の何もないところで」

生きている時点で前提が完結しているから、
永遠を知って、みんな泣き始めてしまうから、
未来の空の色は、海にも瑠璃にも緑にも見えるから、
手を繋ぎたくなるような雲の色が、今にも見えるから

ここには誰もいないから
小声で「愛してる」と言える
私はいない