老いた石

星の裏庭で髪を弄っている。
草も花も気に掛からない。
虫だって、星だって嫌なんだ。見えるようで、
全ては匂いのようで、しかも何の匂いもしない。私は、
一体何を見て生きているのだろう?

老いた白い髪、度の強い眼鏡、石ころだって電子の星からの、
意味の無い隕石。……私は髪を弄っている、私は老いた。
この白々しい、無限で永遠な音楽の中で、
私はしがない、透明な音。

部屋に戻るとギターがある。ギターも私同様老いている。
窓からは無意識みたいに凍った山が見えて、
山の一部は、私の心臓の底にあって、透き通る黒さに光っている。

ホウロウの流し台が影になっていて静かな泉を湛えている。
真鍮の蛇口を捻ると、遠い国からの水が流れ出す、まるで古い本の頁みたいに。
私は静かに、心を浮かせるように、夢想する。水の道……

  私は水の街へお金を払う。
  水の道をどこまでも下っていく。
  一滴の虹を手に入れるために。

  蛇口からの止め処ない水の流れ。
  川、だけじゃない。透明なグリッドの世界。

  水はあらゆる和音を含んでいる。蛇口の水でさえも。
  ギターの音もまた川のせせらぎ。
  音は人生だから。和音が変わると私の、人生が変わる。

  メロディは私の背中を踊らせ、リズムは、
  私の脳の中に溜まりを作る。

  私は、あらゆる音楽を背負っている。
  古い靴の、引き摺りかちな足音を。
  引き出しの中には、古い音楽のポートレート

電気信号が頭の中で発火する。
窓から見える、黒い黒い鳥の軌跡、
LEDの電灯を付けて椅子に座って、ギターを手に取れば、
アンプに灯を灯せば、私は一時的な永遠を得られる。

まるで濡れた、石になれたみたいに。