Location

私は鳥籠が嬉しい。
金網越しの空や、きちんと掛かった鍵が嬉しい。
中で音楽を聴いているとここは、
私専用の小さな天国のよう。

音楽のリールが回ると、時間は逆流して、
金網は溶けて水となり、
物語みたいな私の過去が再生される。
過去の記憶、それだけが意味。
宇宙の、そして私がいることの。

あるとき私は海にいた。
雨降る車の中で私は子供で、
雨垂れの底で私は宇宙だった。

金網の中で疲れを横たえる。
昔と変わらぬ音楽を聴く。
ロックにジャズにクラシック。
眼の中は空っぽで、
皮膚は開かれ浮遊する。

私は鳥籠が嬉しい。
鍵の錆び、空の憂鬱。
万年筆、書き散らされたノート。

全てが溶け合うのを見ている。
あなたが死んだとき、最後まで悼むのは私。
私は絶対に何も忘れない。

鳥籠をありがとう、世界。