リズムのこと

今まで僕は多分、ヴォーカルやリード・ギターやシンセサイザーなどの、いわゆる「上物(ウワモノ)」中心に聴いていた気がする。それから主に中高音域に加えられたアレンジの音などを。例えば、ビートルズにしても初期の、ロックンロールの時代の曲はあまり聴いてこなかった。ビートルズ、と名乗っているくらいだから、ビートルズは、ビート感にとても意識的なバンドだったと思うのに。僕はジョン・レノンのリズム・ギターは本当に好きだけど、それは音が格好いいからで、ジョンの弾くギターの、リズム楽器としての重要性については、あまり考えたことがなかった。ジョン・レノン自身、自分の弾くリズム・ギターがバンド・サウンドの要だ、ということを言っていた。ジョン・レノンの発言なので、本当はもっと格好いいことを言っていて、たしか、「僕はギターが上手い訳じゃないが、僕のギターはバンド全体を、呻らせたり泣かせたり、叫ばせたりすることが出来る」という感じだった記憶があるんだけど。ここ数日、ドラムやベースやギターリフなどの、いわゆる「リズムセクション(リズム隊)」に注意して聴くことが多くて、そうするとイギリスやアメリカのロックが、いかにリズムに拘って音作りされてるか、今までより少しだけ分かったような気がする。ジャズも、今までは多くの場合、サックスとかトランペットやピアノなどの、ソロで目立つ楽器に目が(耳が)行きがちだったと思うのだけど、よく言われるように、ジャズで一番大事なのは「スウィング感」らしくて、それが少し感じられるようになってきた気もする。テクノではもちろん、ドラムとベースがすごく重要な要素だと思うのだけど、テクノも、より楽しく聴けるようになったと感じる。
もちろん「上物」と「リズムセクション」のどちらが大事、ということはないし、日本の音楽がリズムを軽んじている、なんてこともないと思う。一概に日本の音楽はこうで、イギリスの音楽はこうで…、と言い切ることは危険だ。また、「上物」と「リズムセクション」とくっきり分けることも出来ない。全ての音がリズムの要素であり、同時にメロディや和音の一部だと言うことも出来るからだ。でも、聴き手としての僕の意識として、メロディや音色などを重視して聴くか、リズムを重視して聴くか、の違いはあると思っていて、それもくっきりとは分けられないけれど、傾向として、今まで僕はリズムにはあまり気を払ってなかったと思う。リズムによく注意して聴いてみると、今までずっと聴いてきた音楽に、新たな魅力を感じて、音楽がさらに楽しくなったと感じるのだけど、「上物」も、今まで通りよく聴いていて、大好きだ。
今までも、リズム(というかドラム)が特に好きな音楽(例えばジョイ・ディヴィジョン)はあったけれど、曲全体のリズム感はそれほど感じていなかった気がする。少なくとも、あまり意識はしていなかった。音楽の三大要素はリズムとメロディと和音だ、と言われているけれど、僕は、今まであまり、リズムを重要な要素だと思ってなかったと思う。自分でギターを弾くときも、少々リズムがずれても気にしてなかったのだけど、これからはリズムもかなり意識して弾くと思う。僕にはもともとあまりリズム感が無いと思うし、リズムキープの能力があまり無い、と思うのだけど、練習次第で、少しはましになると思う(やっぱりメトロノームを買おうかな)。
僕はこの間まで、例えば、ラモーンズサウンドの魅力があまり分からなかった。ジョーイ・ラモーンの歌声や、キャッチーなメロディはとても好きたっだので、けっこう聴いてはいたのだけど、ドラムとベースとギター一本の、シンプルなバンド・サウンドの魅力は、いまいち分からなかった。簡単な低音のコード(パワーコード)だけをひたすら弾き続け、ほぼ全く高音を弾かず、もちろんソロも弾かないジョニー・ラモーンのギターは、確かに音や、硬派なスタイルは格好いいと思っていたけれど、ジョニー・ラモーンがすごいギタリストだと思ったことはなかった。多くのギタリストに尊敬されているギタリストだと知ってはいたけれど。疾走感や、音全体が脈動する感じや、心地よく興奮した心拍みたいなリズムの持続をあまり感じてなかったし、リズム・ギターなのに、音色の格好良さばかりに気を取られていた気がする。
(この文章に続けて、リズムがとても身体的であることを書きたかったのですが、文体が大分変わってしまって、リズムと身体の関係についてと言うよりは、音楽全般と身体の関係について書いてしまったので、分けることにしました。リズムってとても身体的だ、と言うことについては、また別に書くと思います。)