夜の隙間

三本の樹と暗い野球場
何もかも本当にあったこととは思えない
記憶の扉が開いて
暗い、影のような光景が
逆光のオルゴールの音色のように

そこに新聞紙ははためいて
何もかもが思ったより早く
滅びていってしまうけど
そこを変わらぬ月影が
祈るように、溶けるように
僕の心拍を刻み 過ぎていく

妖和の黄昏は、夢のように
樹から樹を、僕の眼の外に
塗り損ねていき
孤独の方向へと
あの世へと
空の明かりを滲ませていき

アスファルトの上で、僕は
もはや 僕の足とは関係がない
ただ空の葉っぱがさらさらと揺れ
葉っぱは夜の、水銀灯に触れ
見れば見るほど純粋な、女装した大人たち

みんな帰っていく 帰っていった
夢のような夜 野球場の暗いバックネット
風の絡んだサーチライト
何もかもが僕を置いて去っていく
こんな夜とも僕は関係ない

ただ夢のような 大きな三本の樹
その隅で僕は唾を吐き
唾が地中に、暗闇に
死後みたいな 夜の隙間の端っこに
溶けていくのをずっと見ている